ゆるしてあげない
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配役
カナ :
ハルト:
誠九郎(せいくろう):
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■ 学校・廊下
カナ 「はあ・・・重い・・・。先生ったら、こんな本の移動なんて、男子に頼めばいいのに。『こんなの頼めるのカナしかいないんだ、頼りにしてるよ』なんて言われたら、断れるわけないじゃない。いいように使われてるとしか思えないけど、これで先生の気が引けるなら・・・はあ、にしても重すぎるでしょ・・・。」
SE 走る音
ハルト「わわっ、あぶない!」
カナ 「え・・・?」
ハルト「うわあああ!!」
カナ 「きゃっ!!」
SE 衝突音
SE 落とされる本
ハルト「いってててて・・・だ、大丈夫?」
カナ 「ちょっ、あなた、自分から人にぶつかっておいて第一声がそれ? ふつう謝るのが先じゃない?」
ハルト「あ・・・そうだね、気がつかなかった。心配の方が先走っちゃって。ケガしてない? 大丈夫?」
カナ 「これのどこをどう見たら大丈夫って言えるのよ!」
ハルト「・・・よかった。それだけ元気だったら、大丈夫そうだね。じゃ、ぼくはこれで・・・。」
カナ 「ちょっと、待ちなさいよ!」
ハルト「ひえっ!」
カナ 「それが人にぶつかっておいて取る態度? わたしのことバカにしてる?」
ハルト「うわ、めんどくさいなあ・・・。」
カナ 「聞こえてるんだけど!」
ハルト「ああ、つい本音が出ちゃった。えっとじゃあ、どうしたらゆるしてくれるかな?」
カナ 「なんでゆるしてもらえる前提なの?」
ハルト「あの、ぼく、急いでるんだよね。謝罪ならあとでゆっくりするからさ。なんだったら、会見でも開こうか?」
カナ 「さっきからなんなの、その態度・・・。もういい、ぜったいゆるさないんだから!」
ハルト「いや、だから、急いでるんだってば。」
カナ 「うるさい! まず本! あなたのせいで落としちゃった本拾って。」
ハルト「あーはいはい、本ね。拾えばいいんでしょ、拾えば。」
カナ 「口開かなくていいから黙ってやって。」
ハルト「きびしいなあ・・・。ぼく、そんなダメなことしたかな。ちょっとぶつかっちゃっただけじゃない。」
カナ 「ちょっと? どこがちょっとなのよ!」
ハルト「だって、そんなに元気あるじゃないか。これがぴくりとも動かないとかだったら、『大丈夫? 保健室つれていこうか?』ってなってたけどさ。」
カナ 「元気だったからって、罪が軽くなるわけじゃないのよ。」
ハルト「罪だって! はは、これが罪? なに罪になるの、傷害罪とか? でも、特にケガしてないんだよね?」
カナ 「うう、黙りなさい!」
ハルト「はいはい・・・っと、ぜんぶ拾ったよ。これで解放してくれるかな?」
カナ 「ふざけたこと言わないで。そうね、そのままそれ持って、図書室まで運んでもらえるかしら?」
ハルト「いや、だから何度も言うけどさ、ぼく急いで・・・」
カナ 「お黙りなさい! それはあなたの勝手な都合でしょ。いまは非常事態なんだから、そっちは後回しにしなさいよ。」
ハルト「そのセリフ、そっくりそのままお返ししたいよ・・・。」
カナ 「グチグチ言ってないで、はい、持って。持ったら歩く!」
ハルト「こりゃなに言っても聞いてくれそうにないな。しょうがない、さっさと済まして終わりにしよう・・・ってなにこれ、重っ!!」
カナ 「あなた男子でしょ。これくらいで音を上げないの!」
ハルト「おおこわ! 男ならだれでも力持ちってわけでもないのにさ。知ってる? そういうの、男女差別って言うんだよ。」
カナ 「いちいち一言多いのよ。」
誠九郎「遅いぞ、ハルト。なにをしている。」
ハルト「うぇっ、誠九郎。ごめんよ、タチの悪い女子につかまっちゃってさ。」
カナ 「口の悪さじゃ、あなたには負けるわ。」
ハルト「タチが悪いのは否定しないんだ。」
カナ 「そうやって揚げ足ばかり取って・・・!」
誠九郎「遊びに付き合っている暇はない。さっさと行くぞ。」
カナ 「遊びってなによ! 元はと言えば、こいつがぶつかってきたのが悪いのよ!」
誠九郎「そうか。それは悪かった。彼に代わって謝罪する。」
カナ 「なっ、なによ。それでゆるされるとでも思ってるわけ?」
誠九郎「ふむ。ならば、どうすれば良い?」
ハルト「こいつを図書室まで運んでほしいんだってさ。」
誠九郎「なんだ、そんなことか。では、半分よこせ。手伝ってやる。」
ハルト「いいの? たすかるー、さすが誠九郎!」
誠九郎「おだてても遅刻の罪は軽くならないぞ。」
ハルト「ぷっ、誠九郎、この女と同じようなこと言ってら!」
カナ 「ちょっと、歩くの速いのよ。わたしを置いていく気?」
誠九郎「目的と行き先がわかっていれば、関係ないだろう。」
カナ 「うっ・・・口が悪いのは同じなのね・・・。・・・って、待ちなさいったら!」
■ 学校・図書室
SE 本を置く
誠九郎「これで文句は言われまい。追いつかれる前に、出るぞ。」
ハルト「さすがだねえ。その手際、見習いたいよ。」
誠九郎「無論だ。この程度のこと、やってもらわねば困る。」
ハルト「きっついなあ。せいぜい善処するよ。」
SE 足音
カナ 「はあ、はあ、置いてかないでってあれほど・・・って、いないし! 本は・・・ちゃんと置いてあるのね。まったくなんなのよ、もう。結局謝ってもらってないし。運んでもらって助かったは助かったけど、こんな程度じゃゆるしてあげないんだから。次会ったときは・・・覚えてなさいよ!」
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